安達太良山は日本百名山、花の百名山の一座で、福島県中部にある山です。
山頂からは、磐梯山はもちろん、飯豊山や那須連山、蔵王連山などの山々を眺めることができ、見晴らし抜群です。
安達太良山から矢筈森に続く尾根は、今までの景色とは一変して、荒涼としています。
牛ノ背の先からは沼ノ平火口が一望でき、そこだけ真っ白な異世界と化していて、その迫力たるや、ここが活火山であることを思い知らされます。ここは安達太良山に登ったら、絶対見ておくべきポイントです!
ロープウェイを使えば一時間ちょっとで山頂に立つことができるので、初心者の方でもチャレンジしやすい山です。体力に自信があるなら、ロープウェイを使わずに登ることもできます。
こんな方におススメ!
- まるで火星や月のような荒涼とした世界を見たい人
- 智恵子が言っていた本当の空に興味がある人
- 大変な登山は嫌だけど、素晴らしい景色を見てみたい人(ロープウェイ使用)
安達太良山データ【奥岳登山口周回ルート】
標高 | 1,700m | 累積標高 | 816m |
距離 | 10.6km | タイム | 05:27 |
難易度 | 初級 | 体力 | ★★★☆☆(3) |
景色の良さ | ★★★★★(5) | おすすめ度 | ★★★★★(5) |
※ 難易度は初級(Lv1~3)~中級(Lv4~6)の間で分けています。
※ おススメ度は5段階で、ヤマリが登って楽しいと感じた山ほど星の数が多いです。
※ これらはあくまで、ヤマリの個人的主観に基づいたものです。
登山ルート【奥岳登山口周回ルート】

安達太良高原スキー場を通ってロープウェイからの道と合流するまでは、まあまあの上り坂ですが、合流してから先はおおむね緩やかになります。
安達太良山から牛ノ背は絶景ポイントの連続ですので、ロープウェイで来て引き返すにしても、ここまで見てから戻ることを、強くおススメします。(安達太良山から往復で+30分ほど)
くろがね小屋までは下りますが、その先しばらくは、ほぼ平坦に感じる道を歩きます。
その後また少し下って、「馬車道」と「旧道」に分かれる箇所がありますが、旧道の方がストレートに下るので早いです。ただ、黒土でかな~り滑るので、雨の日などは無理せず歩きやすい馬車道を選ぶのもありだと思います。
安達太良山 奥岳登山口へのアクセス方法
車の場合
東北自動車道 二本松IC → 国道459号 → 県道386号 → 安達太良高原リゾート駐車場
駐車場の目の前にはロープウェイ乗り場があるので、ロープウェイの看板を頼りに行くのもいいと思います。高速出口から20分ちょっとで、登山口にたどり着けるのは便利です。
道路は舗装されていますが、駐車場は砂利です。第1、第2合わせて1,500台ほど停められるみたいなので、駐車場の心配はそんなにしなくて大丈夫そうです。一番手前の第1駐車場のみ、土日祝祭日は1,000円です。
このルートだとコンビニの横を一切通らないので、高速降りてからコンビに寄ろう~と思ってる人は要注意です。(ルートから一番近いところで、岳温泉エリアにファミマが一軒あります)
公共交通機関の場合
JR二本松駅から路線バスが辛うじて出ているようですが、行きが8時台一本、帰りが4時台一本、だけです(800円)。しかも平日しか運航していません。あるだけましですが、ちょっと使いづらいですね。
昭和タクシーに「タクシー&ロープウェイ往復セット」があるので、ロープウェイを利用する人は、これを利用するのがよさそうです。(紅葉シーズンは利用できない日もあるようです)
安達太良山登山レポ
東京から安達太良山は遠い…。
朝5時に出発したヤマリ&ボーノさん。
「遠い!遠いよ!往復500km越えるんだけど」
ハンドルを握るボーノさんは、ミンティアを噛み締めながらぼやいている。
ヤマリはボーノさんのぼやきも半ば上の空で、眉根を寄せてスマホの天気と睨めっこ。
微妙すぎる今日の天気…。
東北自動車道のPA・SAの一つも立ち寄らずに、一路ひたすら安達太良山を目指す。
「ここで下りるの?」
ナビが本宮ICで下りるように言ってきた。
「うーん?おかしいな~。二本松だったと思うけど…」
ヤマリが首をひねる。
「どーすんの?」
悩む間にも、どんどんICが迫ってくる。ヤマリは瞬時に判断しなければならない。
「んー、二本松から行くと途中何にもないから、ここからなら何か色々あるかもだし降りよう」
というわけで、ナビに導かれるまま本宮ICで降りる。
結局こっちから下りたのはヤマリたち的には正解で、コンビニや、朝定やってる吉野家などがあった。
ヤマリたちはすき屋で朝定を食べ、ローソンでお菓子を買い込み、安達太良山の駐車場に到着した。

「天気悪いんだけど」とボーノさん。
「そうなんだよねー。でも、金峰山より天気がいい…はずなんだけど」ヤマリも自信なさげだ。
今日は安達太良山か金峰山の二択で、天気のいい方に登る予定にしていたが、生憎どっちも天気があんまりよくないという。

「あれ乗っていこうよ!」
ボーノさんは指さすが、もちろんヤマリが乗るはずがない。
「文明の利器は使わないと」
と言いつつ、大山のケーブルカーには乗らずに山頂まで行くボーノさんである。

砂利道を歩いて行くと、やがてスキー場になる。


スキー場を歩いて行くとか、何か思い出すな~と思ったら、お隣の磐梯山を登った時もそうだった。
最初はスキー場をゆるゆると登っていく。

その内登りが急になってきた。
天気がいまいちなせいか、うっそうと茂った草木の間の狭い道を歩くのが、何となく楽しくない。
しかも、最初は半袖だと寒い?と思うくらい、気温はそこまで高くないのに、登り始めると汗がだらだらと出てくる。湿度が高いのかもしれない。

ある程度登ると、木の高さが低くなってきた。


休憩だー、とボーノさんがリュックを下ろす。
あとから来た男性も、今日は汗かきますね~と言っていた。
ボーノさんはリュックから市販の菓子パンを取り出した。クリームとカスタードたっぷりのデニッシュだ。ちぎった半分をヤマリにくれた。
こんな高カロリーのもの、登山してる時くらいしか食べられない。
一口食べたボーノさん。
「生クリームじゃないなこれ」
「そりゃー…、そしたら400円くらいするよきっと」
食べきって汗をぬぐって休んでいると、今度は体が冷えてきた。体が冷え切らないうちに、また歩き出す。

道中、かわいい花があちこちで咲いていた。家に帰って調べたら、ウラジオヨウラクという花らしい。
もう少し色が濃い、似たような形をしている花も咲いていて、そちらはサラサドウダンという名前のようだ。

薬師岳の少し先に、ポツンと立っているものが。

智恵子抄を何となく知ってる人なら、「!」となるが、ボーノさんは写真を一枚撮っただけで、華麗にスルーしていた。
本当の空…は、今日はどこにあるのだろう。
「真っ白だなぁ。こんなんじゃ、近くの山に登っても変わらないんじゃない?」
ボーノさんに痛いことを言われて、ヤマリは口ごもる。
「うーん…、1,500mに雲があるって天気予報で言ってたから、もう少し上に登れば晴れてるかもしれないんだけど…」
そういって上を見ても本当の空どころか、ガスってて空の欠片も見えない。
今回は下調べってことで、また来年にでもリベンジかなぁ…。
ヤマリは自分を慰めつつ歩いている。
ケーブルカー利用の人たちと合流すると、道はしばらく木道になり、その後は再び石がゴロゴロした登山道になる。

左右から茂った木が覆いかぶさってくるので、リュックにトレッキングポールを付けていたヤマリは、何度も引っかかって後ろに引き戻された。
ボーノさんがリュックの背よりも低くなるように付け直してくれたが、それでも左右の木が邪魔だと感じる場面が多くて、歩きにくい。
ボーノさんも、木や壊れた階段に「歩きにくいなー」と呟いていた。
流れる汗、歩きにくい道…。
磐梯山は登ってる道中も楽しかったのに、安達太良山はそうでもないなぁ。というか、むしろ反対だよなーと、ヤマリは心の中にもガスを漂わせていた。

テンションダダ下がってるヤマリであるが、道々で咲いている花には癒された。

このピンクの花。花の真ん中の白い球みたいなのが可愛い。
まとまって咲いていたので、登山道では一際目を引く。
とぼとぼと歩いていると、視界が開けた。そろそろ山頂も近くなってきたのかもしれない。
が、相変わらず五里霧中の有様である。

ここでも、イワカガミが咲いている。

途中、二人通れるくらいの狭い勾配のある道で、降りてくる団体客とすれ違った。
そのうち途切れるだろうと思っていたら、女性ばかり20人くらいの人がゾロゾロと下りてきた。
「ツアーにしても、結構な人数だね」
賑やかに過ぎ去っていく団体客を見送るヤマリ。
「すみませんって言ってたけど、結局全員下りたぞ。全く譲る気なかったな」
マナーにはうるさいボーノさんが、口を尖らせた。山には基本「登り優先」のルールがある。本来なら下りの登山者が、登ってくる人に道を譲るのが常識だ。
せめて団体の半分くらいの人は下らずに待機して、登りの人を通せとボーノさんはお冠だ。
「んー、多分先頭と後ろの二人がガイドぽかったから、途中で切れなかったんじゃない」
「マナー悪いよな。まあいいけど」

ヤマリたちの更に下がり気味なテンションとは全く関係なく、道端には綺麗な花が色々と咲いていた。


このイソツツジは南限が安達太良山だそうで、東京じゃ見ることができない花のようだ。
気の向くまま写真を撮りつつ山頂目指して歩いていると。

景色が開けたそこには。
先を行くボーノさんがちょっと立ち止まった。
「あれが山頂か?」
視線の先を追うと…。

「晴れてる!!!」
思わずヤマリが快哉を叫ぶ。
直前までのガスの中からのこれは、驚きしかない。
ありがとう登山天気(アプリの名前)!キミは間違ってなかった!!
「すごい!晴れてるよ!!」と、はしゃぐヤマリ。
「晴れてるって山頂だけだろ」ボーノさんは冷静だ。
「そこが大事なんじゃん!!」
登ってきた方面は雲がかかっていたが、反対側は晴れているようだった。
左手の和尚山を見れば、尾根を境に雲を分けていいた。


山頂手前は広々としていて、ここでお弁当を広げている人も何組かいた。
「あちこちにリュックが置き去りにされているけど」
至る所にリュックが放置されているのを見て、ボーノさんが不思議そうな顔をした。
「あー。山頂狭いのかな。この辺りに荷物をデポして登ってるみたい」
ヤマリはすぐそこの山頂を見上げた。
二人も荷物を置くと、必要なモノだけ身に着けて山頂へ。
途中に一方通行の張り紙があったのに気付いたヤマリは、反対側に行こうとしていたボーノさんを呼び戻す。ほんとだ、と、ボーノさんも戻ってきた。

荷物を背負わずに登るのは、羽が生えたような気分。



あっという間に山頂に到着!

山頂は狭くて、入れ代わり立ち代わり人が来ては写真を撮っていく。
ヤマリたちも山頂で写真を撮って、山頂からの景色を少し楽しんで、次の人に場所を譲った。

ボーノさんがお弁当はもう少し先で、と言うのでリュックを拾って歩くことに。
ここから沼ノ平までは、見晴らしのいい景色が広がる。


この辺りが歩いていて一番楽しいかもしれない。
ヤマリは、立ち止まっては写真を撮りまくっている。

歩いていると、ほのかに硫黄の匂いが流れてくる。
しばらく行くと、沼ノ平が姿を現した。

「ここだけ白い!」
1kmに及ぶ火口の大迫力に見惚れて立ち止まる。硫黄などの成分のせいか、周囲にはまともに草木が生えておらず荒涼とした世界が広がっている。
圧倒的な自然の迫力に、ヤマリは大興奮だ。
ボーノさんもしばらくじーっと、荒々しい景色を眺めていた。
もう少し先まで歩いて、沼ノ平を眺め下ろしながら昼ごはん。火口から風が吹きあがってくる。

「あっ!!」
リュックをごそごそしていたヤマリの手が止まる。
「ガスとバーナーだけ持ってきて、ヤカン忘れた…」
「お前なぁ…」
温かいお味噌汁が飲めなくなって、ボーノさんは残念そうだった。
持ってきたお弁当を食べた後は、ボーノさんは双眼鏡を取り出して、沼ノ平を眺め始めた。
「平らな所、左側になんかパネルみたいなのが見えるぞ」
渡された双眼鏡でヤマリも探してみると、確かに左になにか計測している機械のようなものが置かれていた。
「あ、右側にも同じのが見えるよ。噴火の観測してるのかな」
「だろうな」
双眼鏡でその場所に気づいてからは、肉眼でも辛うじてそこに何かあるのが見て取れた。
食事も終えて、帰り道。
再びガスの中に突入する。

峰ノ辻の分岐のところは、真っ白けっけだった。

ここからくろがね小屋方面へ。
今は建て替えで閉鎖中だから、寄らずにショートカットの道でもよかったといえばよかったんだけど。

くろがね小屋まではぼちぼち下る。

途中休憩をはさみながら、くろがね小屋に到着。
周囲から硫黄の匂いが漂ってきて、温泉を汲み上げてるような場所があった。

「ここの山小屋、温泉に入れるんだって」
改装終わったらいつか泊まってみたいなーと、思っているヤマリ。
「ほー」
温泉が好きなボーノさんは、「温泉」という言葉に興味を示したようだった。
ここを過ぎると、平坦と言ってもいい道がしばらく続く。
ボーノさんが登山道横の水がドバドバ流れてる場所を見つけて、顔を洗い始めた。
「冷てー。天国!気持ちいい」と幾分さっぱりした様子。
今日はじっとり汗をかくから、こういう冷たい水は本当にありがたい。

もう少し歩くと、今度は水場らしきものが。上には紐のついたカップが置いてあった。

「飲めるのかなー?コップあるし」
ヤマリの言葉に、ボーノさんは水場の上、石がボコボコと積みあがってるあたり観察している。
「どうだろうなー、パイプまでの道が完全に塞がってなさそうだし」
今、地表に湧き出てきました~という水ではない感じもしたので、飲むのはやめておいたけど、もしかしたら飲めるのかもしれない。沸かせば大丈夫だろうけど。
どんどん歩き進めると、馬車道と旧道の分岐に出る。
ここからはまた下るのだが、道が今までと違って、めちゃくちゃ滑りやすい。超!歩きにくい。

ゴール近くで滑って泥だらけなんて絶対なりたくない。
二人して何度か滑りそうになりながら、無事に危険地帯を切り抜けた。

旧道を抜けると川に出た。
ボーノさんが川に下りて行って、泥だらけになった靴を洗い始めた。
ヤマリも倣って、川に足を突っ込んで、泥を落とす。
いい感じに綺麗になった。
その先は砂利道を歩いて、ロープウェイ乗り場まで戻ってきた。


朝よりも下の天気も良くなっていた。
無事下山!
ロープウェイの横にある源泉掛け流しの「奥岳の湯」を楽しみ、そしてここからまた、東京への長い帰り道が始まるのだった。
奥岳登山口周回ルートの感想
はるばる安達太良山まで来て、途中まで天気悪くて諦めかけてたけど、山頂から牛ノ背、沼ノ平の絶景ポイントは晴れてくれていて、めちゃくちゃ嬉しかったです。山頂で天気よくなると、感動しますよね。登ってよかったー!って。
そういう意味では本当に景色は素晴らしかったんですけど、ただ、山頂に来るまでが、歩いていてあんまり楽しくなかったような。
これは天気が悪かったからで、天気いいときに登ったらまた感想が違うような気もしますが。
純粋に登るのがきつくて大変、というわけではなく(むしろそれならいいんですが)、左右の木にバサバサ引っかかったり、頭上の木に首をすくめたりとか、そういう鬱陶しさがあったかなと。
美味しいところ取りするなら、ロープウェイを使って山頂まで行って、沼ノ平まで足を伸ばし、ロープウェイで帰るのが、一番いいかもしれないです。
ただそれだと、ある程度苦労して登ってから見る景色の素晴らしさ!みたいな感動が薄れちゃう気もするので、そこはお好みと体力に相談になります。
安達太良山にしても磐梯山にしても、福島は迫力のある山があっていいですね。
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