ススキの大海原を越え、天空の鐘を鳴らしに【杓子山】

山梨

記念すべき第一投は、山梨の百名山「杓子山」。
この日も、いつも一緒に行くボーノさんと二人で。
↓は参考までに、行った時のヤマップの活動データだよ。相変わらずのごくごく標準のペース。

東京に住んでる低山ハイカーだと、最初は奥多摩に行ってても、段々未知の世界を求めて、山梨方面に足を伸ばすようになっていくもの。
山梨は気軽に登れる山がたくさんあって、素敵なところ。東京近くには、大菩薩嶺、もう少し行けば金峰山、瑞牆山。もっとも、瑞牆山は最初登った時は、つらたんだったけど。

さてこの杓子山。都留市にあって、東京からもアクセスがいい山で、山頂からはドーンと富士山を拝める。いいよね~富士山。富士山自体には小学生の頃二回行って、二回とも新八合目で引き返した経験がある私からすれば、もう富士山はもう見るだけで十分と思っている。

杓子山のルートはいくつかあって、不動湯からが一番最短で行けるんだけど、それだと少し物足りないので、鳥居地峠からのルートにした。
不動湯は霊験あらたかな温泉で、アトピーの人の最後の頼みの綱と言われるようだ。温泉の隣には霊水を持ち帰ることができる場所があって、温泉に入った人は無料で持って帰ることができる。

話を戻して、鳥居地峠へは忍野中から道に入って、車一台しか通れない道をしばらく進むと、道の横に数台の駐車スペースが現れる。私たちが到着した時は、既に数台停められていた。
ゲートの奥にも数台停められそうなので、頑張れば10台弱くらい停められるだろうか。
支度をしていざ出発。まずは高座山(たかざすさん)へ。

さっそくお出迎えしてくれる、鳥さん。

なんの鳥さん?

林道をしばらく進み、開けた場所に出るとそこは一面のススキ畑だった。

銀色に輝くススキ
見渡す限りススキ

いきなりの絶景。まさかの絶景。
ここまでススキで見事な場所だと思っていなかったので、いきなりテンションmaxに。
「おおおーー!すっっごーーい」
語彙力の乏しさを全開にして喜ぶヤマリを尻目に、ボーノさんは近くのススキを一本引っこ抜いて、ぶんぶん振り回し始めた。二人ともいい中年のくせに、メンタルは小学生からまるで成長していない。

ススキと富士山

横を向けば、ススキと富士山。
この時期ならではの景観だ。早くも、杓子山に来てよかったな~と、最近少し忘れかけていた、美しい景色を見た時の感動みたいなものを味わえた。
最近山に登って綺麗な景色を見慣れつつあるせいか、そういった感動を味わいづらくなってきていたような気がするのだが、一面のススキには、久しぶりに興奮した。

ススキ畑にひとり

ススキといえば、箱根の仙石原のススキが有名だけれども、こっちの方がいいのでは…?
仙石原のススキももちろん見事なのだけれども、こちらは観光用ススキではないため、人が少ないのもいい。

ススキに見とれて浮かれていたのだが、ふと我に返ってヤマップを見てみると…
「あれ…ここ、道が違う…」
どうやらふらりとススキ畑に誘われて、いきなり序盤から道を間違えていたようだ。
予定していた登山コースに戻れる道があったので、方向転換。
しかし、めっっちゃ急な上り坂。
これ下手に転んだら、真っ逆さまにゴロンゴロン転がり落ちるやつや…。

そして途中からは、草をかき分けながらの道のり。

辛うじて道は…ある?

たまにトゲトゲした草が足を直撃する。スボン履いてる上からでも、ちと痛い。
まだか~開けた道はまだか~。大して長くない距離だけど、こういう道は長く感じる。
ようやく登山道に出て、少し登ると右手にとっても綺麗に開けた道が見えた。
「こっちの道の方が正解だったろ」とボーノさん。
はい、まったくもってその通りでした。次来るときは絶対そっちにします。

その後もやたらと急登が続く。
ここ数日天気がいいから土も湿ってなくて滑らないけど、これ、雨の日の後とか、ぬかるんでる状態の時は、かなり大変なんじゃないかと思う。
しばらく登っていくと、高座山の山頂に到着。

高座山山頂

ここからの眺めも、なかなかに良し。
山頂は広くなくて、ベンチなどもないので、景色を見た後はすぐに杓子山へ。
道はところどころ狭くて、ばさばさと草や枝が身体に当たる。
「整備してくれよ~」とボーノさん。
確かに、ここまでばさばさあたるところって、あんまりないかも。
道端には、まだまだ元気にトリカブトが咲いている。

山ではよく見るトリカブト

登山したての頃は、やたら目立って綺麗だけど、なんか色がどぎつい花があるな~、と思ったものだけど。
マムシグサもそこかしこで、赤い実をつけていた。

マムシグサ

危険なモノって、やっぱり目立つようにできてるのかな。
と、思う私の横には、マツムシソウが一輪ひっそりと咲いていました。まだ咲いてるんだね。

登山道から見上げれば、本当にすっかり秋の気配。

色づくモミジ
秋ですな~

秋というか、冬間近。
紅葉のシーズンってあっという間に終わるから、その間に色々と綺麗なところは見ておきたい。

杓子山はほとんど岩がないので、急だけど、自分の歩幅で登れるのでそういう意味では大変ではない。
最初から最後までそんな感じかと思ってたけど、途中一か所だけ、少しよじ登る場所発見。

よじ登りポイント

とはいっても、そこまで大変な場所じゃない。
「ロープあるじゃん」と、多少整備されてる感が嬉しいらしいボーノさん。
少しこういうよじ登りポイントがあると、更に登山が楽しくなる。

いよいよ山頂が間近になってくると、再びドーンと富士山がその姿を見せる。
富士山っていいよね。他の山と一線を画す圧倒的存在感。わかりやすく良い。

ドーン!と富士山

もうひと踏ん張り、で、杓子山山頂に到着。

杓子山山頂

ついたー!
杓子山といえば天空の鐘。
こういう鐘は軽く鳴らそうとすると、弱弱しい音しか出ないことが多い。
ある程度しっかりと、でも大きすぎない程度に…と、勝手に力の加減をして鳴らしてみたつもりだったんだけど、

カーーーーーーン!!!!

予想外に大きな音が出て、鳴らした自分がびっくりするという。

山頂にはテーブルが4つ

さっそくメスティンを取り出して、ごはんを炊く。
最近固形燃料を使った自動炊飯が失敗続きで、気温が低いせいだと睨んだ私は、沸騰具合が弱かった時に備えて、コンロも準備。やっぱり少し吹きこぼれ具合が弱かったので、そこはコンロの火力でしばらくぶくぶくさせた後、固形燃料の上に戻す。
ご飯を蒸らしている間に、レトルトカレーをボイル。

のんびりとご飯が炊けるのを待つ間。
誰もいない静かな山頂。風はほとんどなく、お日様がぽかぽかと背中を温めてくれる。
目の前には雪をかぶり始めた富士山と、抜けるような青空。
本当に気持ちいい。

隣ではお腹をすかせたボーノさんが、まだかコールを連呼している。
蒸らしを終えてメスティンのふたを開けると、輝く銀シャリが。
「ちょっと水っぽいけど、まあ飯盒だし難しいからな」とボーノさん。
今回はまあまあ上手く炊けた。これなら、次からはもっと安心してご飯が炊けそうだ。

帰り支度をし始めたころに、下から女性数名がガヤガヤと山頂に登ってきた。
途端に破られる静寂。
「おおーー最高ね!この景色!」
「いやーーきっっっついわぁぁぁ!」
「前登ってきたときも、このくらい綺麗だったのよぉ~!」
とワイワイ話ながら、コンロを取り出してみんなでごはんの準備を始めだした。
それを尻目に、私たちは山頂を後する。

ボーノさんは騒々しいのが嫌いである。
「すれ違いでよかったね」と私が言うと、
「あんなにでかい声で、俺たちに聞かせてるのか」と呟いていた。
「たぶん、しゃべるのやめたら死んじゃうんだよ」
ある意味、ずっと大きな声でしゃべり続けるというのは、すごいと思う。
特に今回のおばさまの声は、また格別に大きかった。

下山は途中までは同じ道。途中から不動湯の方に向けて方向を変え、周回する形で駐車場まで戻る。
帰りの道はトレランの旗が道々にかけられていて、広めの道だった。

行きがあれだけの急登だったから、帰りもそんな感じなのかと思いきや、登りの急さが何だったのかと思うくらい、穏やかなものだった。

到着した時には、車は三台に減っていた。
この辺りの山に登った時には、都留にある「より道の湯」に寄って帰るのが定番だ。
冷えた身体をホカホカにして、東京に戻る。
ススキが見事だったし、いい山だった。
ボーノさんが「山頂に来る人たち、みんなキツイ~って言ってたけど、そんなにか?」と、言っていたから、登りなれていない人にはまあまあキツイ山ではあると思う。
ちょっと大変だけど、登ると綺麗な富士山が見える山。
それが鳥居地峠ルートからの杓子山である。

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